- WATASHI -
toricoと私
子供の頃から、私は“強い色”が好きだった。
ビビッドな配色。
主張のある柄。
どこか攻めたフォルム。
心はいつも、そっち側に反応していた。
でも同時に、
「それは選ばないほうがいい」とも知っていた。
無難なほうが安心。
理解されるほうが安全。
いつの間にか私は、
“好き”よりも“正解”を選ぶようになっていた。
流行も知っている。
バランスもわかる。
似合うものも、選べる。
だけどどこか、物足りなかった。
本当は、もっと攻めたい。
もっと、尖りたい。
もっと、「私」に振り切りたい。
その欲望を、ずっと静かに飼い慣らしてきただけだった。
あるとき、地下足袋に出会った。
靴でもない。
伝統でも終わらない。
説明しづらい、でも確実に空気が変わる形。
それは、私の中で眠っていた衝動と
ぴたりと重なった。
似合うかどうかじゃない。
好きかどうか。
理解されるかどうかじゃない。
自分が、震えるかどうか。
履いた瞬間、ありきたりじゃ物足りない、ワタシが、確かにそこに立っていた。
誰かに与えられた個性じゃない。
自分で選び取った輪郭。
まだ攻められる。
その感覚が、すべてだった。
虜は、誰かを救うためのブランドじゃない。
すでに感性を持っている人が、
もう一段、自分を解放するためのブランド。
好きを、貫くための装置。
粋とは、
理解されることではない。
自分の衝動に、正直であること。